青がきこえる

ブルースの底なし沼へようこそ

2つの「Love in Vain」

 Well, it's hard to tell, it's hard to tell, when all your loves in vain.

(とても伝えるのが辛いんだ、お前の俺への愛が空しく終わっちまうなんて)

 

ブルースは男と女の関係を歌った楽曲が多い。

その中でも失恋をとりあつかった曲は取り分け多い。

 

「Love in vain(空しき愛)」もその類いの曲である。

 

オリジナルはロバートジョンソン。

 

自分の彼女を駅に送っていく男。

男は自分の彼女の心が自分から少しずつ離れていくことに薄々気づいている。

自分の彼女が乗る列車を見送る男。

男の後ろには信号機が。

青の点滅は俺のブルース、赤の点滅は俺の心。

男は自分の愛が終わったことを思い知る。

 

そして、この曲を自分達の音と完成でアレンジし別の楽曲とも言えるくらい昇華させたグループがいる。

それがローリングストーンズだ。

 

今日はこの「2つ」のLove in Vainについて今日は書きたいと思う。

 

【オリジナル:ロバートジョンソン】

先述したがこの曲のオリジナルがロバートジョンソンである。

1937年の録音。

 

 Robert Johnson - Love In Vain Blues (Takes 1&2) (1937) - YouTube

 

低音弦でベース音を刻みながら高音弦で美しいメロディを奏でるギタースタイル。

そこにジョンソンが得意とするファルセット唱法によるモーンが加わる。

一人でここまで自己完結できるミュージシャンはなかなかいない。

これは驚異的だ。

 

どこにも救いどころのない楽曲ではあるが美しさを感じてしまうのは僕だけではないはずだ。

 

信号機の点滅を男の心情を表す詩のセンスも抜群。

 

【カバー:ローリングストーンズ】

ローリングストーンズのLove in Vainは1967年リリースのアルバム「Let it Breed」に収録されている。

 

 Love In Vain - Rolling Stones - '95 - (de Robert Johnson) . vog.028 - YouTube

 

キースリチャーズの3連符のスローなアコースティックギターアルペジオ

その土台の上を流麗に滑るかのような美しいエレキギターのスライドギターのサウンドが絡む。

 

そして間奏から始まるライクーダーのマンドリン

 

ロバートジョンソンの弾き語りの楽曲が見事に美しいバンドサウンドに昇華している。

 

ブルースの匂いもしっかり感じとれるが、カントリーの匂いも感じることのできるアレンジとなっている。

 

【2つのLove in Vainを結ぶ】

今日は2つのLove in Vainを紹介した。

僕はジョンソンのオリジナルも、ストーンズのカバーもそれぞれ独立して楽しんでいる。

 

ジョンソンがこの曲を書いた1937年、そしてストーンズがこの曲をカバーした1969年。

実に30年以上の開きがある。

しかし、時代がどれだけ移り変わろうが変わらないもの。

それは男が自分の手に感じていたスーツケースの重さである。

自分の心から離れていく彼女のスーツケースの重さを男はどう感じていたのだろうか。