初めてブルースにでっくわしたとき、そいつらは掃除機ん中をくぐり抜けてきたんだ
ブルースとは何か。
これという定義はできない。
しかし人間誰しもブルースを抱えて生きていることは間違いない。
日曜日にサザエさんを見ながら「明日仕事(学校)行きたくねぇな~」
という比較的軽度なブルーもブルースだ。
しかしスリーピージョンエスティスのような「目が見えない自分のキッチンでネズミが自分の食料を食べてしまう」
といった飛びっ切り理不尽でブルーなブルースには敵わないだろう。
理不尽。
人間はこの三文字に一番ブルーな気持ちを抱く。
黒人の歌うブルースはそういった理不尽さを嘆く歌詞が多い。
今日はそういった意味で僕が生まれてきて初めてブルースを感じた日のことを書きたい。
そう、、、あいつらは掃除機からでてきたんだ。。。
小学生高学年のときだったと思う。
確か夏休みだったかな。
あのときの僕はひたすら毎日ポテチを食べながらPCに向かっていた。
狂ったようにみていた。
半分廃人である。
それに見かねた母親が遂にキレた。
「アンタぁ!毎日パソコンばっかりしてないで掃除しなさい!!」
当然であるがこの状況は全然ブルースでも理不尽でもなんでもない。
自分の子供がなにもせずポテチをひたすら食いながらパソコンにかじりついているのだ。
それはキレる。
めんどくせぇな。。。
と思いながら僕は掃除にとりかかった。
我が家において母親の命令は絶対なのである。
(ちなみに現在もそうである)
とりあえずあらかた整理整頓が終わって、掃除機をかける。
うなりごえをあげて掃除機は部屋のホコリをすいとる。
掃除完了だ。
とりあえず母親に掃除が終わったことを告げる。
「おかあさん~掃除おわったよお~」
「掃除機の音がきこえんかった。」
!?
おかしくないですか!?
ちゃんと掃除機をかけたことを説明する。
しかし母は聞こえなかったと一点張り。
「もういっかいやりなさい!」
理不尽である。
まだ掃除機のかけかたがなっていないという類いの苦情なら分かる。
でも音が聞こえないというのは。。。
僕は掃除機のスイッチを再度入れた。
そして息を大きく吸い込み
「ぶぉぉおおおおおおおおおおおおんんんんn!!!」
渾身の力で叫んだ。
母に聞こえるように。
「アンタなにやってんの!!!」
母が鬼のような形相で部屋に入ってきた。
掃除機を力づくでとりあげられこっぴどく叱られた。
めちゃくちゃ怖かった。
理不尽である。
掃除機の音が聞こえないから大きな声をだして聞こえるようにしたのだ。
それなのに、である。
現在24歳。
これ以上の理不尽はまだ経験していない。
初めてブルースにでっくわしたとき、そいつらは掃除機ん中をくぐり抜けてきたんだ。
これが本当の意味で僕とブルースとの最初の出会いだ。
もちろんこのとき僕はブルースのブの字も知らなかった。
文章:菅原翔一