青がきこえる

ブルースの底なし沼へようこそ

伝説を乗り越えようとするエネルギーが伝わってくるブルースアルバム Robert Jr Lockwood「Steady Rollin Man」

 

ステディ・ローリン・マン

ステディ・ローリン・マン

 

 

バスケならマイケルジョーダン。
陸上ならボルト。
芸術ならピカソ

 

様々な分野で神様のように崇め奉られている人がいる。
偉大すぎて乗り越える気も起こらない、そんな人達。
俗にいうレジェンド。

 

ブルースでのレジェンドは誰だろう。
人によって答えは様々だろうが、恐らくロバートジョンソンになるのではないだろうか。

 

たった1本のギターでリズムパートとリードパートを同時に演奏。
そこにファルセットを巧みにいれた歌が入る。
そんなジョンソンのブルースは悪魔的な美しさがある。

 

そのロバートジョンソンの義理の息子として有名なのがロバートジュニアロックウッドだ。

 

今日はジュニアロックウッドの名盤「Steady Rollin Man」を紹介したいと思う。

【このアルバムについて】

本作は1972年デルマークによってリリースされた。
バックはシカゴブルースを語る上では外すことのできないリズムセクションのエイシズだ。
ちなみにこのときロックウッドは50代後半。
数多くの重要な録音のバックを支えてきたロックウッドの脂の乗りきった頃のレコーディングだ。

 

【ロックウッドって誰やねん!?】

ロバートジュニアロックウッドは1915年生まれアーカンソー州出身のブルースマン
15歳でプロとして活動をしていたというから驚きだ。

ハープ吹きのサニーボーイウィリアムソンⅡなど有名ブルースマンのバックとして活躍していた。

ロバートジョンソンから直接ギターの手ほどきを受けたというギターはやっぱりロバートジョンソン直系といった感じだ。
(ちなみにロバートジョンソンのレッスンは一度目の前で弾くだけという超不親切なものだったらしいw)

 

【このアルバムの聴きどころ】

①ロックウッド流のロバートジョンソンナンバー

 

本アルバムの12曲中の3曲

・Steady Rollin Man
・Rambling On My Mind
・Kind Hearted Woman
はロバートジョンソンのカバー。

 

しかもぶっちゃけ1曲目のTake a Walk With MeはSweet Home Chicagoの改作w
(歌詞が違うだけですw)

 

つまり実にこのアルバムの1/3がロバートジョンソンのカバーという訳です。
やはりロバートジョンソンがロックウッドに与えた影響は計り知れないものだったようだ。

 

しかしロバートジョンソンのギターをそのまま弾いている訳ではない。
ロバートジョンソンのスタイルを土台に自身のセッションギタリストとしてのキャリアと感性を上手く融合させている。

 

曲に彩を与える感覚はセッションギタリストならではかと。
僕はこのアルバムを聞くたびにいろんな色が脳裏に浮かぶ。

 

②エイシズの鉄壁のリズム

 

ロバートジョンソンとロックウッドのサウンドの決定的な違い。
それはロバートジョンソンにはバックがついていなかったのに対して、ロックウッドにはバックがついていたという点。(当たり前だw)

しかもとびっきり優秀なバックw
それがエイシズ。

 

特にフレッドビロウのドラムはやっぱり凄い。
軽快に叩くのにに腰がすわったドラムだ。
軽いけど重い。
重いけど軽い。
矛盾にしかとれない表現かもしれないがフレッドビロウのリズムは正しくそんな感じだ。

 

この鉄壁のリズム隊がついたサウンドは本作に3曲収録されているインストゥルメンタル曲で凄みを増す。
特にA面4曲目のSteady Grooveは必聴だ。

 

(ちなみにロバートジョンソンの世代では弾き語り形式が主体だったためバックがつかないというのは当たり前といえば当たり前)

 

【伝説を乗り越えようとするロックウッドの熱を感じて欲しい】

 

僕が思うロバートジュニアロックウッドの偉大な点。
それはブルースの不動のレジェンドとして君臨するロバートジョンソンに立ち向かったところではないかと思う。

 

普通ならロバートジョンソンのギターテクニックに触れると打ちのめされるはずだ。
自分には到底こんなことはできませんよ・・・みたいな感じで。

 

しかしロバートジュニアロックウッドはロバートジョンソンのスタイルを自分の感性と経験によって消化した。
消化するためにロックウッドは尋常ではないくらいロバートジョンソンと向き合ったはずだ。

 

僕はこのアルバムを聴くときにロックウッドのその熱を感じずにはいられない。
その熱がロバートジョンソンのデルタブルースをシカゴブルースに昇華させたのだ。

 

この熱を感じて欲しい。

 

〜余談〜

初めてみたときなんてカッコいいジャケだろうと思った。

 

f:id:mojomanta:20170701232615j:image

 

よく見てみよう。

f:id:mojomanta:20170701232643j:image

 ハゲている。

 

よくみるとあんまりかっこよくないジャケであった。

f:id:mojomanta:20170701232707j:image

 

文章:菅原翔一