青がきこえる

ブルースの底なし沼へようこそ

10,154kmを飛び越えるブルースピアノ 10月7日アリヨさんのライブレポート

10,154km。

日本からシカゴへの距離である。

そんな遠く離れたシカゴへ移住し、ブルースピアノを弾くピアニストがいる。

それが有吉須美人、通称アリヨだ。

 

そんなアリヨのブルースピアノを聴きたくて京都のRAGまで足を運んだ。

開場時間の1時間ほど前に会場に到着したのだがもう4,5名ほど女性客が。

どうもアリヨさんの高校の同級生っぽい。

このライブはプチ同窓会も兼ねていたのであった!(皆さん懐かしそうに昔話をされていてとても楽しそうでした!)

 

開場時間に近づくにつれてどんどんお客さんが増えるわ、増える。

整理番号が後ろのほうだったから、席が後ろの方になってしまう!という焦りのような気持ちと、こんなにブルースを愛してくれている人がいるのか!という嬉しい気持ちが混ざり合うなんとも不思議な気持ちになった。

 

開場!

整理番号順に会場になだれ込むお客さん。

席はやっぱり後ろのほうなんだろうなと諦めていたけど難なく最前列に座れた。

アリヨの反対方向だったからアリヨのブルースを弾く姿の全体像がしっかり見れるいい席でした。

ラッキー!!

 

開演!!


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アリヨの指から紡ぎだされるブルースから何となくシカゴの冷たい空気が鼻に入ってくるような気がした。

何とも心地の良いシャッフル。

楽しすぎる~!

思い切りノリノリで聴いてしまう。

 

バンドはこのライブのためにつくられた1回きりのバンド。

リハーサルも2時間ほどらしくメンバーも探り探りで少しぎこちない。



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そんな中、京都で活躍するブルースユニット、TWINSの双子の兄の方の小竹直さんが実に全体の音を聴いて、バンドサウンドを盛り上げるためのギターを弾いていたのが印象的だった。(一瞬でファンになりました!)

少しずつ息が合ってくるバンドにこれが音楽やなぁ!と妙に興奮してしまう私。

 

アリヨはもう弾きまくり!

終始笑顔でノリノリだ!

お客さんはもっとノリノリ!

そう、ブルースってこんなに楽しくて嬉しいんだよ。

 

シカゴブルースの名曲がたくさん演奏されていく中、印象に残ったのが2曲。

リトルウォルターのMy BabeとベッシースミスオリジナルのAin't Nobody Business。

この2曲に共通するのが僕の大好きなブルースマンのロバートジュニアロックウッド。

My Babeでは凄くキャッチーなバッキングを弾いているし、Ain't Nobody Businessでは2回目の来日公演でとても感動的な演奏をしている。

 

My Babeはアリヨのアレンジでリズムが原曲と一風変わっていてとても面白かった!

「俺のアレンジやから!」っていつも強調しているとMCで。

強調して頂かないと!それくらいとっても面白いリズム!

 

そしてなんとAin't Nobody Businessではロックウッドの来日ライブでアリヨが弾いていたピアノソロを自分の耳で聴くことができた!

 

なんとなくピアノを弾いているアリヨの傍でロックウッドが静かに微笑みかけているのが見えたような気がする。

それに涙腺が思わず緩む。

 

ライブ終了後にアリヨさんに失礼千万なのは承知でロックウッドはどんな人でしたか?と聞いてみた。

 

「好々爺でしたよ。僕には凄く優しくしてくれたけど音楽には物凄く厳しい人でした。」

アリヨさんが笑顔で答えてくれた。

僕がロックウッドのアナログレコードを聴きながら想像してきたロックウッドと一致していたのが嬉しかった。

 


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アンコール後のGot My Mojo Workin'は大盛り上がり!

Nacomi & The Blues TempleのNacomiさんが乱入したりと大人数で賑やか!

もうコール&レスポンスのガタマイモウジョワーキン!は拳振り上げて一緒に歌ってました笑

 

多分、ブルースを普段聴かないであろう上品そうなおばちゃん(失礼!)が立ち上がってノリノリで踊りまくる!

これを見て涙がでるほど僕は嬉しくなったのです。

そう、おばちゃん(失礼!②)、ブルースってこういうことなんやね。

凄く楽しくて嬉しくなっちゃうんよね。

 

最後にアリヨさんのヴギウギピアノでステージは締めくくられた。

大満足で会場を後にした。

 

 10,154kmという距離を飛び越えてブルースピアノを弾きつづけるアリヨ。

 

「ブルースっていうのはそいつの生き様のことやろうが」

僕にブルースの泥沼にはまるきっかけを与えてくれたとある喫茶店のマスターに言われた大事な言葉がある。

 

語弊を恐れずに言うのであれば僕はアリヨさんのピアノには感動しなかった。

ピアノの音を通して伝わってくるアリヨさんの生き様に深く感動したのだ。

 

生き様は自分で決めればよい。

自分らしく、という曖昧な言葉はひとまず置いておこう。

自分が納得できることを精いっぱいやろう!

アリヨさんのブルースピアノがそれを教えてくれた。

 

文章:菅原翔一